286:とんかつ ◆voT6OcgkPo:2007/12/06(木) 01:23:46.74ID:3UGkvDEo
俺:おっす。どこいこっか?
俺は、今更ながら高まってきた心臓の鼓動を紛らわすように、明るく言った。
まなみ:ん、公園でいいかな。寒くない?
今日は結構厚着だった。
友達の家に忘れっぱなしだった唯一のファー付きアウターも返ってきたし、寒くない。
俺:大丈夫だよ。まなみも、大丈夫?
まなみ:うん、平気。ごめんね、夜に呼び出して。
やっぱり、声にも元気というか、なんか覇気がない。
俺:大丈夫だよ。じゃ、いこっか。
公園は俺とまなみの家のちょうど間。俺は手をのばしてまなみに差し出した。
まなみ:・・・あっ、大丈夫。これあるから・・・。
まなみは、ちょっと慌てたような感じで言いながら、杖を振ってみせた。
俺:あ、ああ、そっか?
俺の中で心臓が崩れてくような気分を感じた。
空をかすめただけの手が、行きどころをなくして彷徨った。
・・・なんか・・・やばいな。
俺は多分すごい情けない顔をしてたと思う。
タイミングも失って、強引に手を繋ぐことも出来なかった自分に憤りを感じ、
気の利いた返事も出来ない自分を悔いた。
無言・・・。
無言・・・。
二人の歩く音と、杖のカツカツ、という音だけが響いた。
俺は、この杖の代わりになることも出来ずにいた。
横を歩いているってのに。
カツカツという音が響くたびに、俺の存在が薄くなってくように錯覚した。




