大人気の星野源を徹底解明。ミュージシャンや俳優だけではない、マルチの才能の秘密や魅力とは?

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路線を変更

雑誌「ダ・ヴィンチ」で掲載されていた連載を中心に、作品をまとめたこちらのエッセイ集「いのちの車窓から」は、最初の連載がスタートした2012年当時、人の悩みに答える相談連載だったと言います。それについて、星野源さんはこのように語っています。

最初は編集者の方からお話をいただいたんですが、僕も忙しいながら何でもやりたい時期だったので、連載を受けさせて頂いた。でも、早々に僕が病気で倒れて、中断してしまい…それで復帰後の2014年に「僕は相談を受けるほどの器ではないので、連載はエッセイでやるのはどうでしょう」とあらためて提案し、そこから今のエッセイの形になりました。

エッセイを書く時は、どんなことを伝えたいという質問には。

それまで僕が書いてきたエッセイだったら「こういうメッセージを伝えたい、自分のこういうところを見てほしい」という前のめりな部分があったのですが、第1回の古田新太さんについて、エッセイを書き終わって実感したことは、自分の目の前にいる人のことや、そのときの状況を書くというのが気持ちよく、文章にできた時にスッキリした気がしたという。この形なら連載を続けられるかも、という思いが芽生えたと言います。その前までは、読む人の役に立つ文章じゃなければいけない、何かを伝えなくてはいけないという強迫観念みたいなものがあったのだそう。しかし、そこから解き放たれて、ただ目の前で起きたこと、そして、それによって自分の心はどう動いたのか?を客観的に描写していくことが、“個人的快感”に気づき、読む人のことを考えたというより、個人的な楽しみの一つみたいな部分になったという。

人が好きだから、わかること

エッセイの中でも、早く書き上がったもの、時間がかかったものは?の問いには。

自分なりに一番早く書けたのは、新垣結衣さんについて書いたもの、ちょうどドラマの撮影を一緒にしているというリアルタイム感もあって、すごく早く書けたと思います。それに対し時間がかかったのは「SUN」という自分の曲について、書いたエッセイ。楽曲解説はどうしても自分を語る部分が多くなるので、そういう要素をできるだけ引いて、曲が気になった人が読んで、より面白く聴けたらいいと思って、推敲を重ね努力したと言います。

ちなみにエッセイの中では、新垣さんが恥ずかしがり屋なので「クランクアップまでこの文章を読まないことを祈る」と書かれていましたが、新垣さんはその後、読まれたのかという疑問には。

それがわからないんです(笑)。撮影中、この原稿をマネージャーさんにご確認お願いしたところ、すごく喜んでいただけ「アップまで内緒にしておきますね」って。その後、内緒を解いたのかはわからないという。

本作を読み、星野さんは“人のいいところ”を伝える才能があると感じました。ご自身では意識している部分はありますか?

幼い頃は、すぐ人に抱きつくような活発な子どもだったらしく“人好き”だったと思うんですけど、だんだんとウザがられるようになって…。抑制が効かなくて、避けられたり嫌われたりするたびに「好きになってはいけない、あまり感情を表に出してはいけない」と思うように。そして、人見知りだとわざわざ人に伝えることによって、コミュニケーションを取る努力をサボっていた時期もあったそう。しかし、それでストレスを感じることもあり、成長するに従って、人に対して素直になったほうがいいなと感じるようになったという。ガツガツして嫌われても、自分は好きなんだから変えなくてもいいじゃないと思うように。そういうことにより「僕はあなたのここが好きなんです、スゴいんですよ!」と、なるべく本人に伝えるようにしているとのこと。最近、世の中は「ここが悪い」「ここが間違ってる」って、指摘したり突っ込む人ばかりになってしまったなあと思っている。だから数年前から、ネットもテレビもまったくチェックしなくなりました。それにより、悪いことを突っ込むのはみんなに任せて、この人が好きだという気持ちや、いいと思うところだけを書きたいと思いました。

思いやりと幸福感

さて、星野源さんご自身は文筆家・エッセイスト、ミュージシャン、役者と、幅広い活躍をされていますが、それぞれの分野で星野さんが生み出す作品については、どんな違いを感じますか?

音楽については、映像やイマジネーションや景色を音に変換して、現実に出していく作業が楽しい。セルフプロデュースならではの、自分は全責任を取るという立場で、プレイヤー・スタッフ含めて「チーム星野源」で進んでいるという感覚があります。役者は、演出や監督の方がいて、自分は駒の一つ。なるべく星野源というものをなくしていきたいという職業で、そこに快感があります。文筆業は役者と微妙にかぶり、自分自身が生み出すイマジネーションを残すというより、見てきた景色をなるべくそのまま記録して残していく、というイメージです。

まだまだ、書きたい人はたくさんいるそうで「大河ドラマ「真田丸」で共演させていただいた近藤正臣さん、最高に素敵な人だったんです。書きたい人はいっぱいいますね。」と語った星野源さん。星野さんの書くエッセイには思いやりと幸福感があふれ、読んだ方は「書かれている人のことを好きになる」というほど、こんなところが、星野源さんのマルチな才能の秘密や魅力なのかもしれませんね。今後も、星野さんに関わるすべての人について書いてほしいと思いました。