男「いえまあ、おっしゃるとおりなんですけど」
女「下着の色は適当に言えば、当たりますしね。外れても問題ないですし」
男「……えっと、その確認のためにここに来たんですか?」
女「とても重要なことでしょう?」
男「まあ重要じゃないとは、言いませんけど」
女「お嫁に行けるか行けないかの問題でしたからね、わたしにとっては」
男「お嫁?」
女「……ひとつ、わたしの憧れてたことの話を聞いてくれません?」
男「憧れてたこと、ですか。どうぞ」
女「わたし、大学生になるぐらいまで、ドラマチックに死にたいって思ってたんです」
男「変わってますね」
女「はい、自分でもそう思います」
女「世界の終わりに好きな人と寄り添って死ぬとか」
女「自分の命を使って、誰かを助けて死ぬとか」
女「なんか、そういうものに憧れていたんです」
女「生きてみじめな姿をさらすなら、自殺したほうがマシ」女「けっこう本気でそう思ってたんです。いえ、昨日までずっと……」
男「命をかけるってことが、フィクションの世界だと美しいものとして描かれることがありますよね?」
男「おそらくそういう影響なんじゃないですか?」
女「ああ、自分の命よりも大切なもの……みたいな?」
男「そうです」
女「そうですね、きっとわたしはそういうのに憧れてたんですね」
男「僕も死ぬ前は、そういうのに憧れてましたよ」
女「今は?」
男「言わせないでください」
男「フィクションにおける主人公とかは、そういう命をかける場面に遭遇したりします」
男「そういうのに、昔は僕も自己投影してたりしてました」
男「でも、今はみっともなくても、みじめでも」
男「生きたいって懇願する人物のほうに、ついつい共感してしまうんでしょうね」
女「漫画とかに出てくる仲間を売って自分だけ助かる、みたいな悪役とかですか?」