女「決まってます。屋上です」
男「屋上に行って、なにをするんですか?」
女「いいから、ついてきてください」
男「……わかりましたよ」
男「それで、いったいここへなにしに来たんですか?」女「わかりませんか?」
男「思いあたることがありすぎて、ちょっと」
女「そうですか」
男「ちょ、ちょっと……!」
女「塀のうえに登ったぐらいで、そんな声を出さないでください」
女「あなたは言いましたよね? 自分にわたしを止める資格はないって」
男「言いましたけど、それは……」
女「嘘をつくのはよくありませんよ」
男「自分で自分を殺すよりは、マシだと思いますよ」
女「……」
女「なにか勘違いしてません?」
女「もう一度言います。嘘をつくのはよくありませんよ」
男「嘘なんてついてませんよ、僕は」
男「あなたに話したことは、全部事実です」
女「いいえ。あなたは嘘をついてます」
男「なにを?」
女「本気でわかりませんか? それともとぼけてるんですか?」
男「だから、とぼけてなんて……」
女「下着」
男「……はい?」
女「だから、下着です」
女「昨日管理人さんが、ここからいなくなった段階で気づけたはずなんですよね」女「塀の下には、人が身をひそめられるぐらいのでっぱりがある」
女「これで気づくべきでした」
女「マンションの下から覗いても、でっぱりがジャマでスカートの中なんて見えるわけがないんですよ」
男「……」
女「どうですか? 間違ってないでしょう?」