男「いえ、酒の類はほとんど飲まないんで」
女「わたしもです。飲むとすぐ気持ち悪くなっちゃって」
女「現実逃避のためにブラックニッカ飲んだら、気持ち悪すぎて」
女「また死にたくなりました」
男「よく死にたくなる人ですね」
女「死にたくなる人はたくさんいると思いますよ、きっとね」
男「死にたくなる人は、ね」
女「……はい、わたしが缶をもっててあげますから、口つけてみてください」
男「じゃあ、このジュースで」
女「はい、どうぞ」
男「ほかの人がこの光景を見たら、なんて思うでしょうね」
女「ひとりぐらい笑ってくれるんじゃないですか?」
男「それは笑われてるんですよ」
女「うっさいですよ。さっさと飲んでください」
男「えっと……では……」
女「わたしもいただきます」
男「……」
女「ふふっ……変なの。おちょぼ口になってるし」
男「いや、こうするしかないでしょう」
男「はたから見たら、変なのはあなたですよ」
女「昨日の夜ご飯のときも、こんな感じだったんですかね」
男「おそらく」
女「……ジュース、どうでした?」
男「きっとおいしかったです」
女「……」
男「どうしました?」
女「本当に、わたしったらなにやってるんでしょうね」
男「僕とジュースを飲んでるんですよ、ごくごくと」
女「ごくごくって、なんか生きてるって感じがしますね」
男「……そうですね」
女「それじゃあ、行きましょうか」
男「次はどこへ?」