嫌われても人に対して素直になったほうがいい
――本作を読むと、星野さんは“人のいいところ”を伝える才能があると感じました。ご自身では意識している部分はありますか?
星野源 僕、幼い頃は、すぐ人に抱きつくような活発な子どもだったらしいんです。でも、だんだんとウザがられるようになって……。
元は“人好き”だったと思うんですけど、抑制が効かなくて避けられたり嫌われたりするたびに
「好きになってはいけない、あまり感情を表に出してはいけない」と思うようになったんですね。
エッセイでも触れたように、“人見知り”だとわざわざ人に伝えることによって、コミュニケーションを取る努力をサボっていた時期もあった。
ただ、それでストレスを感じることもあって、成長するに従って、人に対して素直になったほうがいいなと感じるようになったんです。ガツガツして嫌われても、自分は好きなんだから変えなくてもいいじゃないか、と。
だから、「僕はあなたのここが好きなんです、スゴいんですよ!」というところは、なるべく言うようにしています。
――そんな経緯があったんですね。
星野源 そうですね。あとは世の中が、「ここが悪い」「ここが間違ってる」って指摘したり突っ込む人ばかりになってしまったなあと思って。疲れちゃったんです。だから数年前から、ネットもテレビもまったくチェックしなくなりました。
もっといいニュースが見たいなと思うし、いい話を聞きたいし、その人のいいところを知りたいと思う。
悪いことを突っ込むのはみんなに任せて、この人が好きだという気持ちや、いいと思うところだけを書きたいと思いました。
「好きになってはいけない」そう思って人とのコミュニケーションを避けようよすることもあった星野さん。しかし成長する中で〝星野源らしさ”を見つけていったのですね。
――星野さんは、文筆家・エッセイスト、ミュージシャン、役者と、幅広い活躍をされています。それぞれの分野で星野さんが生み出す作品については、どんな違いを感じますか?
星野源 音楽は、自分の頭の中に浮かんでいる映像やイマジネーションや景色を音に変換して、現実に出していく作業が楽しいです。セルフプロデュースなので、自分は全責任を取るという立場で、プレイヤー・スタッフ含めて「チーム星野源」で進んでいるという感覚があります。
役者は、演出や監督の方がいて、自分は駒の一つ。なるべく星野源というものをなくしていきたいという職業で、そこに快感があります。
――なるほど。
星野源 文筆業は役者と微妙にかぶるんですけど、僕が生み出すイマジネーションを残すというより、自分が見てきた景色をなるべくそのまま記録して残していく、というイメージです。
あとは音楽制作も役者もたくさんの人と作りますけど、本は特に編集者と2人だし、個人的な作業の時間が長いですね。
――でも本当に、星野さんの書くエッセイには思いやりと幸福感があふれていますよね。
星野源 連載を読んでくれた人は、「書かれている人のことを好きになる」と言ってくれましたね。
自分が本当に好きな人のことを書いているので、とても嬉しいです。
――今後も、星野さんに関わるすべての人について書いてほしいと思いました。
星野源 全然、書けると思います。大河ドラマ『真田丸』で共演させていただいた近藤正臣さん、最高に素敵な人だったんです。
書きたい人はいっぱいいますね。
もともと人好きだった星野さん。だからこそ人の素敵な部分をたくさん見つけてくれるのではないでしょうか。
「この人が好きだという気持ちや、いいと思うところだけを書きたい」
そんな思いを込めたエッセイ本。彼の本を読んだ人は、幸福感に包まれたり、彼の魅力に引き込まれる人はたくさんいるのではないでしょうか。
今後も魅力いっぱいの星野さんの活躍に期待したいです。