そうだ。様子だけでも見ておかなきゃ。
そう思い、ベランダに出ました。
そこでようやく自分が土足だったことに気づき、平謝りをするとばーちゃんは
「だいじょぶだ。ぜーんぶ掃除しちまうから」と、この事態に動じることなく淡々としていました。
下に止めていた愛車は、もうどこにもありませんでした。
車が流されるほどの激流に、この家が堪えられるのか。
先刻考えていた不安がまさしくその瞬間、現実味を帯びていました。
携帯は持っている。
情報は入るものの、一番重要な現地の情報が入りませんでした。
津波です。逃げてください!
その繰り返しです。
ばーちゃんはカラカラと
「逃げろっておみぇ、出来るもんならさっさとやっとるが」
笑いながらニュースを見ていました。
空が暗くなり、雪がちらついていました。
そんな時間まで、ただずっと部屋で待機していたのですが、ふと外から人の声が聞こえてきました。
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