男「死んでからの夜は長いって話です」
女「わたしは夢を見てましたよ」
男「いいなあ」
女「夢の内容は教えてあげませんから」
男「聞きませんよ。それより、これからなにをするんですか?」
男「なんだか大きなバッグも、持ってますし」
女「あなたが使っていた部屋に行きます」
男「は?」
男「ど、どういうことですか?」
女「不動産屋に問い合わせたら、すぐわかりました。あなたが使っていた部屋のこと」
女「それから、現在は引越し時期ってことで部屋も偶然空いてるそうです」
男「いえ、そういうことじゃなくて」
女「いいからついてきてください」
男「……」
女「……手、引っ張ろうとしても触れないんでしたね」
男「スケスケですからね」
女「でもついてきてください」
男「わかりました」
男「うわあ、クリーニングされたんですね。すごいきれいになってます」女「わたしの部屋よりきれいですね」
男「でも、なにもありませんね」
女「わたしたちしかありませんね」
男「……」
女「なにか感想は?」
男「いえ、正直この部屋を見ても、なんの実感もわきません」
女「ここで昔暮らしてたんだ、とかそういうのもありませんか?」
男「ひょっとして、僕を気づかってここにつれてきたんですか?」