女「う、うるさいです。とりあえずさっさとここを出ます」
男「最期の食事なのに、そんな食べ方しなくても」
女「……」
男「急にがっついたと思ったら、今度は食べるのをやめて……ブレブレですよ」
女「ちょっと黙ってください」
男「結局すごい時間をかけて食べましたね」
女「最期の食事ですから。当然でしょう。なにか文句でも?」
男「いえいえ。そんなことよりも、これからのことについて話しましょう」
女「あなたと話すことはありません。ていうか、いつまでついてくる気ですか?」
男「僕の善意を無下にする気ですか?」
女「善意?」
男「あなたが死ぬ前に、僕がベッドの上で天国へ導いてあげようとしてるのに」
女「わたしが地獄へ送ってあげてもいいんですけどね」
男「あははは、それは無理ですよお」
女「たしかに、そんな気がします」
女「……ていうか、あなたってすごい変わってますよね」
男「僕の求愛行動がですか?」
女「ちょっとその話題からはなれましょうか」
男「なにがいったい変わってるんですか?」
女「全部が全部変ですけど、普通の人って自殺する人に対してその理由を聞きますよね?」
男「なんですか、ひょっとして自殺する理由を聞いてほしいんですか?」
女「ち、ちがいます。変な勘違いしないでください」
男「僕に抱かれたくない理由なら、お聞きしますけど」
女「あくまでその話題にもってこうとしますね」
男「だって、あなたの自殺理由を聞いても、あなたを抱けるわけじゃないですよね」
女「しつこいですっ!」
男「まじめな話すると、死ぬ理由って聞いても面白くないじゃないですか」
女「面白いって……」
男「だいたい予想がつきますしね。興味がわかないんです」
女「ずいぶん簡単に言いますね」
男「ええ、本気でそう思ってますから」
男「僕は、死ぬ理由よりも、どちらかというと生きる理由のほうに興味があります」
女「生きる理由?」