女「気持ちわるいこと、言わないでください」
男「まあまあ。そう言わずに。僕の話を聞いてくださいよ」
女「……勝手にどうぞ」
男「気持ちひとつで、なにもかも変わるってことを認めたくない。
そういうことじゃないですか?」
女「……」
男「これから自殺するって人間としては、そういうのって知りたくないですよね」
男「気持ちひとつで昨日まで輝くかもとか思うと」
男「死のうとしていた意志までゆらいじゃいますもんね」
女「わたしが死ぬのは決定事項です。今さら変わりません」
男「いいえ。だったら喜んであなたは、最後の晩餐を楽しめると思いますよ」
男「たかが百円のハンバーガーで、自分の意志が消える」
男「それがコワイんじゃないですか?」
女「これはビッグマックなんで、百円じゃありません」
男「ここぞってところでボケないでください」
女「むぅ」
男「ついでに、僕に抱かれてもいいと思っている自分がいる。そうですね?」
女「いえ、それだけは死んでも変えるつもりはありません」
女「人間のバグっていうのは、なかなか人間に都合よくできてるみたいですね」
女「でも、世の中には変わらないこともあります」
女「わたしの気持ちは動きません」
男「あなた、さてはすごいガンコですね」
女「そうです。石のようにかたい意志をもってるんです」
男「あと、ギャグセンスないですよね」
女「……べつに、あなたを笑わせたいわけじゃないんで」
女「ていうか、さっきから変な会話をさせないでください」
男「変な会話?」
女「ええ。さっきから妙に視線を感じるんです」
男「これから死ぬのに、赤の他人の視線が気になるんですか?」