東京に出張したときのことだった。
昼食時、ふつうの定食屋だと思ってそのお店に入ったら
何となく空気感が違う。
普通だったらサラリーマンでごったがえす時間帯
そこはすごく静かな空気が流れていた。
一番安い料理でも3千円はする高級和食店だったのだ。
悩んだ挙句、僕は顔を真っ赤にしながら正直に言った。
「予算が足りないので失礼します」
調理場から顔をのぞかせた店主が、
カウンター越しに小さな声でささやいた。
「ご予算はいかほどでしょう?」
顔から火が出そうになりながら僕は
「千円では無理ですよね?」と言った。