スポーツで食べていくということ
武井さんは昔から身体能力が高く、小学校4〜5年生くらいの頃にスポーツで生きていこうと決めたそうです。
身体能力で社会から逃げ切ってやろう。
そんな気持ちからでした。
大学くらいまでスポーツに打ち込みましたが、なかなかうまくいかない。
そんなに世の中は甘くないというのがスポーツ界の現状です。
しかしなんとか成功したいとトレーニングを理論的に考えました。
一年トレーニングをして能力が伸びた場合です。
筋力が強くなったなどの場合は能力の幅が広がります。
バッティングの能力が高くなった場合は能力の高さが上がります。
この縦にどんどんと伸ばしていくことが技術の高いアスリートとなります。
陸上選手であれば、100mを10秒0で走れるアスリートは、殆ど横幅が無いような状態。
なので、その横幅から外れると、ただのど素人になります。
ほとんどの人がプロのスポーツ選手として活動できないスポーツ業界。
ほんとうにギャンブルのような世界です。
実際に武井さんは、陸上競技で2年半くらい十種競技の日本チャンピオンでした。
しかし、誰も「十種競技」さえも知らないというのが現状です。
それでお金を稼ぐ、経済価値を産むということが全くできませんでした。
クオリティとニーズは別物
武井さんの考えでは、物事の何が価値を産むかというと「人が求めるもの」。
スポーツにおいて武井さんのクオリティは相当高いものですが、価値がない。
なぜなら、それを求めている人がすごく少ないからだと気づきました。
例えば、世界で最高品質のものを何か1つ作ったとします。
明らかに地球上で最高の品質。
しかし誰にも告知しなければ1つも売れません。
これに社会的な価値があるかというと、無いことになります。
世界に10番目くらいのクオリティだが、世界中の人が使っていて、世界中の人が欲しがっている。
これが1年に10億個売れる。
これはすごい経済価値を生みます。
それが社会的な価値だと武井さんは語ります。
8年間、家がなかった
それから武井さんは「世の中で価値のあるものは何だろう」と模索し始めます。
もがいている時代に森山直太朗さんや、ピエール瀧さんと出会います。
そんな芸能人が一緒のテーブルについて話し出すと、みんな笑顔になります。
これが衝撃的でした。
「この人達は俺の欲しいものを持っている、魔法使いじゃないですか」
この人たちがライブで歌うだけで、5,000人10,000人という人が泣いたり喜んだりします。
自分にはなくて、この人たちにあるのは、「これ」なのだと気づき始めます。
そこから自分が成功したいと思ってやっていただけのスポーツを変えることになります。
世の中の人が自分を愉しみに見てくれる人になれないかと考え始めます。
スポーツのクオリティでもなければ、商品のクオリティでもない、トークの面白さだけでもない。
それを見て喜んでくれる人の「数」だということに気づき、活動を始めます。
しかし武井さんには人を楽しませるトークの術さえもありませんでした。
その日から家を借りることをやめました。
自分の服やカバンにICレコーダーを仕込んで、芸人さんたちが集まるバーに通います。
トークで盛り上がって笑いが起きているところを編集して繋いだCDを車で流すようにします。
ずっと車で流して、ずっと一人で聞いていました。
8年かかりました。
8年ずっとその人たちの声のトーンや間を全部まねして、一言も間違わないようになりました。
誰かが必要としてくれて初めて、価値がある
武井さんはこう語ります。
「僕が今持ってる価値とか、頂いている収入とか、そんなものなんて自分のクオリティで手に入れてるもんじゃなくて明らかに、僕に皆さんがつけてくれているものだと思うんですね。どんな仕事しても、どんな趣味持っても、どんな希望持てて、どんな夢があっても、それを誰かが必要としてくれなければ、僕は価値が無いと思います。」
それは30歳の時までに日本一のクオリティを保っているにも関わらず、1円も稼げなかったからこそ感じることでした。
武井さんは続けます。
「だから、できる限り若いアスリート達には僕みたいなタレントのことを羨ましいと思って欲しいんですよ。何であの人の記録は大したことないのに、あんなに色んな人に応援してもらって、沢山のお給料貰って、自分の好きなスポーツを自分のお仕事に出来ているんだろう?」
武井さんのチャンピオンとしての能力が、今では何百万、何千万という価値になっています。
オトナになっても夢は叶う
武井さんは大人になって初めて「自分の価値」について考え、勉強するようになりました。
今でもこういうことをしているそうです。
朝から晩まで仕事が詰まっているが、必ず一日が終わった後で一時間トレーニングをする。
昨日の自分より、今日の自分が成長してあげるようにする。
それと自分が全く知らないこと、例えば初めて聞いたニュースを一時間必ず調べる。
この二時間だけはどんなに遅くて時間がなくても自分にプレゼントしているそうです。
最後に武井さんはこのように締めくくりました。
「是非、皆さんにも一日10分でも20分でも30分でもいいんで、今自分の持ってない知識や能力をより伸ばしてください。今密かにもっている夢だとかあったら、オトナになって絶対に叶うよっていうことを、メッセージを送りたくて今芸能界でスポーツをやっていますので。」
この「大人の育て方」は動画でみることができます。
ぜひご覧ください。