女「握手です」
女「わたしはあなたがきらいです」
男「あれ? 生きてなければきらいじゃないみたいなこと、言ってましたよね?」
女「あなたは例外です」
男「あらら。死んでから、生まれてはじめてフラれるなんて。悲しいですね」
女「はいはい、わかりました」
男「……握手、どうすればいいんでしょうか?」
女「細かいことは気にしないでください」
女「ただ、わたしの手を握ってください」
男「……はい」
女「ふふっ……やっぱり変ですね」
男「あはは、手が微妙に透けてますね」
女「かんちがいはしないでくださいね。わたしは、あなたのことがきらいですから」
男「しつこいですね、あなたも」
女「あなたには負けます」
男「どうでしょうね」
女「……きらいなあなたのせいで、わたしは生きようと思っちゃいました」
男「あなたらしいセリフですね」
女「でも、ありがとうございます」
女「あなたに会えて、本当によかったです」
男「……」
男「やだなあ、勘弁してくださいよ」
女「?」
男「もっと生きたいって思っちゃうじゃないですか」
女「じゃあいつか、あなたが死にたくなるぐらい幸せな姿を見せてあげますよ」
男「いつごろになりますかね」
女「知りません。生きてるうちに、とだけ言っておきます」
男「楽しみにしておきます」