その後どうやら私は《女房を若い男に取られて逃げられた哀れな夫》であると、周りから思われてしまったようです。
その後何年か経って、転勤辞令が出て
違う営業所に移動して引っ越しました。
女房がいなくなって暫くの間、
同情や哀れみの目で周りから見られるなど色々ありましたが、
今となっては当時起こったことが全て夢のようです。
あの当時は筋肉質で引き締まっていた私の体も
今ではすっかり衰え脂肪ばかりが目立つようになりました。
黒々していた頭も完全に真っ白で年月を感じさせます。
転勤が決まった際、どうして何も起きないのか不思議に思い、転勤前に一度だけ巨大廃墟を再訪しました。
延々と山道を走っていきましたが、なぜか細い道路が拡張されています。
ダンプも大量に走り回っています。
現地に着いたら、何もかも消えていました。
鉱山跡も精錬場跡も全てきれいに消えうせて土地造成の真っ最中でした。
立っていた看板を見ると
高級リゾートホテルが建設される様子で、
その為に全てが消え去り、
整地作業が行われていたのでしょう。
全ては完全に消えうせていました。
あの二人は本当はどこに行ってしまったのか?
あの若い男は誰だったのか?
なぜ妻らは訴えなかったのか?
今となっては全て遠い時の彼方へ完全に消え去ってしまいました。
もう真相は未来永劫完全に判らないままでしょう。