男「まあそうですけど」
女「天国とか地獄とか、そういうのはわかりませんけど考えるのはやめておきましょう」
男「うーん」
女「なんですか? 俗物的とか言いたいんですか?」
男「いえ、やっぱりほぼすべての人間が、そういうふうに思いこんでるんだなと思って」
女「思いこんでる? なにを?」
男「そもそも疑問に思ったことはありませんか?」
女「……えっと、幽霊なんて実はいないとかそういう話ですか?」
男「いえ、幽霊の有無に関してはいると思いますよ、たぶん」
男「それより、こういう疑問をもったことはありませんか?」
男「心霊写真とかってありますよね?」
男「あれってすごく変だと思いませんか?」
女「おっしゃってる意味がぜんぜんわかりません」
男「まあ人が死ぬ理由はいろいろありますから、一概には言えませんけど」
男「こういう心霊写真の話は聞いたことありません?」
男「自殺した人間の霊が、その自殺現場で撮った写真に映る」
男「これっておかしいと思いませんか?」
女「べつに。なにか強い怨念とかがあって、写るとかそんな感じでしょ」
男「じゃああなたに質問します」
男「自殺したあと、写真に写りたいって思いますか?」
男「死んで生きてる人間から開放されることを望んだ結果が、自殺だったのに」
女「……人それぞれでしょう、そんなの」
男「でもあなたのように、死んでほかの幽霊と添い遂げて幸せになったら」
男「写真に写ったりしないんじゃないですか?」
男「たとえ写ったとしても、あんなふうに見た人を戦慄させるような写り方、しますかね?」
女「もっとはっきり言ってもらっていいですか?
わたしにはあなたがなにを言いたいのか、全然わかりません」